◆ 通常の不動産売却と同じですが、売却額の透明性と、家財道具の整理に注意が必要です
手続きの主な流れは、遺言執行者から「遺贈通知」を受け「遺贈承認」「所有権移転登記」「売却前手続」「売却依頼」「売買契約・所有権移転登記」「売却完了」となります。
(1)遺贈承認は、遺贈不動産が売却もしくは団体で活用できるかを判断して承認してください。そのためには、登記事項証明書(登記簿謄本)、登記済証(権利書)、固定資産税評価証明書、不動産売買事例、不動産情報などから判断します。特に共有者、抵当、借地(家)権などは注意してください。
(2)所有権移転登記(遺贈登記)によって団体の所有になります。必要書類(遺言書、登記事項証明書、遺言者の住民票の除票、戸籍謄本等)は通常は遺言執行者が用意します。団体側は法人の資格証明書(法人番号でも可)登録免許税の支払いくらいです。任意団体の場合は代表者の個人名義で登記することになりますので、代表者の住民票が必要です。
(3)売却前手続では、家財道具などが残っていることもあり整理が必要です。仏壇・位牌、貴金属、美術品、アルバム等の整理は遺言執行者に相談しながら進めてください。事前相談がある場合は遺言者の意思を聞いておくと良いと思います。家具類の整理(処分)やリフォームは、売却依頼予定の不動産仲介者とよく相談してください。その他に電気、ガス、水道の変更届、管理組合の名義変更等の手続きが必要になります。
(4)不動産売却依頼には、複数業者に依頼する一般媒介契約と、1社に依頼する専属専任媒介があります。遺言書等に仲介者が指名されていればその通りにしますが、指名が無い場合は遺言執行者と相談して決めてください。遺言執行者は遺贈登記までの役割が一般的です。不動産仲介業者の選択は透明性の確保が大事です。高額な事業用物件などは売却予定額を入札方式で不動産仲介業者を決める方法もあります。
(5)所有権移転登記には売買契約書、登記済証、実印、固定資産納税証明書、物件状況報告書など多くの書類が必要ですので不動産仲介業者と相談しながら準備してください。契約時に契約金(手付金)の受領、仲介手数料、固定資産税などの精算を行うのが一般的です。
(6)売却完了後に寄付額を確定させますが、売却額全額を寄付額にして経費を別に計上する方法は、予算外の支出を伴いますが、寄付額は判りやすいです。売却額から売却経費を差し引いて寄付額にするには、仮受、仮払処理で精算した場合は、予算外の支出はありませんが、寄付額は売却額より少なくなります。遺言執行者とも相談して決めてください。
(7)決算日までに売却できない場合は、財務諸表に固定資産税評価額等で計上を行います。翌年度に売却が終わり計上額よりプラスなら寄付額の追加で、マイナスなら寄付額が減ります。