遺贈寄付の知識

遺言能力とはなんですか?

◆有効な遺言を作成することのできる判断能力のことです

遺言の内容とその法的効果を理解して判断する意思能力のことを法律用語で遺言能力といいます。遺言時に遺言能力を欠く者が作成した遺言は無効です。
15歳に達した者は遺言をすることができます。つまり、遺言能力があります。これに対して、15歳以上の者でも、事故や病気、加齢等による精神上の障害によって、物事の判断能力(事理弁識能力)を欠く状態になると、遺言能力が失われます。遺言能力の判断は法的評価を伴うため、医師が遺言能力の有無をそのまま診断書に書いてくれることは通常ありません。仮に書いてくれたとしても裁判でそれが認められるとは限りません。
成年被後見人であっても、一定の要件のもとに遺言を作成することができます。具体的には、成年被後見人が事理を弁識する能力を一時的に回復した時に、2 名以上の医師が遺言の作成に立ち会い、遺言者が遺言時に事理弁識能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、署名押印することが求められます。
遺言能力の有無が問題にされやすいのは、遺言をめぐり相続人や受遺者間で紛争が生じたときです。自己に不都合な内容の遺言の効力を、遺言者の遺言能力を争うことで否定しようとするわけです。
過去の裁判例では、遺言能力の判断要素として次のような点が考慮されています。

<遺言能力の判断要素>
①遺言時における遺言者の精神上の障害の程度
医学的見地に基づく遺言者の事理弁識能力の障害の程度がどの程度であったか、診断書や入院診療録、主治医の話、立会人の説明等の資料に基づいて考慮される。
②遺言内容
遺言の内容は複雑か簡単かが考慮される。簡単なものであるほど遺言能力は肯定されやすくなる。
③遺言の動機や遺言に至る経緯
遺言者がその遺言を作成するもっともな動機があるか、遺言を作成した経緯に不自然な点がないかといったことが考慮される。

今後、遺贈寄付が広まるにつれて、民間非営利団体が遺言者の遺言能力をめぐる相続人との紛争に巻き込まれるケースが増えることが予想されます。民間非営利団体が遺言の作成から関わることはあまりないかも知れませんが、万一、高齢者や精神上の障害のある方から遺贈の相談を受けたときは、遺言者の遺言能力についても配慮するようにしてください。

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