遺贈寄付の知識

遺言書サンプル(包括遺贈+付言事項)

包括遺贈とは、遺言者の財産の全てを割合的に遺贈の対象とすることをいいます。ここでは、遺言者の財産を遺言執行者に換金、清算させ、余剰がある場合の残余財産を全部民間非営利団体Yに包括遺贈する清算型遺言と呼ばれる公正証書遺言のサンプルの解説を行っています。このサンプルの事案では、遺言者が法定相続人である弟には財産を残さない代わりに付言事項で遺言者の想いを伝えようと試みています。弟が受遺者団体に対して悪い印象を抱かないようにとの配慮からです。なお、兄弟姉妹には遺留分がないため、弟が受遺者団体に対して遺留分減殺請求を行使することはできません。
実際に遺言書を作成される際には、事案に応じて専門家の支援を受 けることをお勧めします。

登場人物・団体

遺言者A
遺言者の法定相続人
遺言執行者:X
受遺者:Y1、Y2

遺 言 公 正 証 書

平成27年 第○○○号

記載例ポイント解説
【前文】
 
第1条(包括遺贈)
遺言者は、遺言者が本遺言効力発生時に有するすべての財産を、特定非営利活動法人【Y】(住所:○○○○)に遺贈する。

・包括遺贈の相手が1名(1団体)の場合の記載例です。複数場合は、財産の何分の1を誰に、というように指定します。
第2条(執行方法)
遺言執行者は、遺言者の財産を適宜換金し、同金額から遺言者の債務、本遺言の執行にかかる費用、遺言執行者の報酬その他一切の債務・諸費用を控除して、なお残余があるときは、これを前記【Y】に交付する。なお、遺言者の財産のうち、遺言執行者にて換金が困難である財産については、【Y】に対する名義書換の方法により承継させることを妨げない。
・清算型遺言の記載例です。万一、遺言者の全財産をもってしても債務、費用、遺言執行者の報酬を支払うに足りない場合、包括受遺者たるYが不足額の支払義務を承継することになりますので、Yとしては遺贈放棄の手続きを検討する必要があります。
 
第3条(遺言執行者の指定)※省略・遺言執行者については、特定遺贈サンプルのポイント解説を参照のこと。
第4条(遺言執行者の報酬)※省略

                   以上
・遺言執行者については、特定遺贈サンプルのポイント解説を参照のこと。
〈付言事項〉
弟の○○へ
特定非営利活動法人【Y】は、アジアで人身売買や児童労働の被害を受けた子どもたちを支援する団体です。私は、生前から、同団体の会員として、アジアの恵まれない子どもたちのために、先に亡くなった夫とともに支援を続けてきました。今般、○○国で大地震があり、同団体が設立したシェルターが倒壊し、また、多くの子どもたちが犠牲になりました。私は、熟慮に熟慮を重ねた結果、同団体が困難から脱し、再び活動できるよう、すべての財産を同団体に寄付することにしました。
あなたは、両親を早くに亡くしてからともに困難を乗り越えてきたかけがえのない存在です。夫に先立たれた私を常に気遣ってもくれていますので、何も残せず心苦しく思いますが、家族や仕事に恵まれ、幸せに暮らしておられますので、私の遺志を尊重してもらえるものと信じています。
これまでどうもありがとう。どうかこれからも家族を大切に、よき人生をお送りください。
上へ戻る 上へ戻る